L'Arc-en-Ciel(ラルク・アン・シエル)アンオフィシャルファンサイト

花葬 ---「ray」収録


「花葬」の存在感

それはあまりにも鮮やかで艶やかで美しく・・・それでいて温度の低い・・・ 「花葬」という単語は、それだけで想像を喚起するには十分過ぎるほどの存在感です。

埋葬、火葬、風葬、鳥葬・・・・死者の葬り方は様々、単語も様々。しかし棺の中に花を詰めることはあっても、「花葬」とは・・・?

何も考えることはありません。ただ目を閉じて、旋律とhydeの声に耳を傾けてくれれば分かること。

・・・瞼の裏の真っ暗な視界が 瞬く間に の色をした花々で 埋め尽くされてゆきます。
もない、 の拍動も感じられない、 重く張り詰めた空気
深紅の花弁は星の重力に逆らい、 を止めたようにを舞います。
無感動なまでにたくえたは 花弁の隙間を縫うように を巡ります。
を容れたのような世界の真ん中には、
途切れそうな命を辛うじてつなぎとめた『愛しい貴女』と、それを抱く主人公の姿が・・・─。

愛しい人の身体が朽ち花に埋もれゆく様を見て、あなたは何を感じるでしょうか?

words〜hydeを聴く〜

「ばらばらに散らばる花弁 雫は紅」

くれないの色をして乱れ舞うそれは、愛しい貴女の血飛沫か、美しくも儚く散った運命の残骸か・・・はたは嘆き止まれぬ主人公の、哀情を映すであったか・・・

そこにあらゆる意味を負って、花弁が漆黒の空間へ不規則に舞い上がります。

また「ばらばら」に散ら「ばる」花「びら」と、濁音のば行と清音のら行がリズム良く交互に響くことで、おどろおどろしさの中にも妖艶な美しさを垣間見せています。

「狂い咲いた夜に 眠れぬ魂の旋律 闇に浮かぶ花はせめてもの餞」

この曲の歌詞についてhydeは、「和を基調とした幻想美の世界。・・・血の赤。狂い咲き、というのは血を花と見立ててるんで、それが季節外れに花が咲いているように見えるっていう。」と答えています。

血の赤をかけてるんだろうなあとは思っていましたが、まさかここまではっきり「血」のつもりだったとは。狂い咲き、ばらばらと散らばる、「赤」の世界を形成しているのが「血」だなんて、とってもグロテスク。けれどそれでもこの曲の持つ美しさは揺るぎません。

日本の音

旋律はどこか日本風。古き良き時代の陰影があります。「さくら」の音に思うあの郷愁、金糸の刺繍を見てはっとする時の感動。コトバでは何とも説明しがたいけれど、日本人らしい感動を私たちはきっと共有しているはずなんです。

この曲を聴くとき、あなたもきっと、日本人に生まれてよかった、と思えるでしょう。 日本の持つ旋律の美しさに心を潤ませることの出来る日本人で。

花葬リミックスver.

yukihiroによるリミックスバージョンの「花葬」もまた私のお気に入りです。

普通の曲では、vocalが曲の主人公、というか、一番目立つというか、舵をにぎっているというか・・・そんな印象を受けます。しかしyukihiroによるリミックス曲の中では、vocalの声も"声帯という楽器から出されるひとつの「音」"として周囲の楽器と同列に扱われ、計算された上で曲の構成要素に組み込まれています。(実際の理論的にどうかは知りませんが、私にはそんなふうに聞こえます)。

始めはやはり違和感がありますが、慣れてしまえば全く別の曲のように楽しむことも出来るものです。

そんなyukihiroによるリミックス曲の中でも、特に「花葬」リミックスバージョンはおすすめ。 シングルバージョンが比較的どろどろしているとすれば、リミックスバージョンでは、"所詮宇宙の中で起きた偶然による一現象に過ぎない"かのような、あっさりした感じを出しています。誰かが「花葬」の世界を宇宙から見下ろし傍観しているかのような。この対比は絶妙です。



2006/12/30
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